ぐっすり眠ろう


不眠にもいろいろ
不眠には4つあり、第1はベッドに入ってもなかなか眠りにつけない「入眠困難」、第2は、夜中に目が覚めてしまう「睡眠維持困難」、第3は、朝、早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」があり、第4は、朝、目が覚めた時に「ああ、よく眠った」と❝スッキリ眠った感❞を感じない、「熟眠感不足」です。わが国では5人に1人が上記のどれかだと報告されています。
 不眠状態が長く続くと健康を損ねます。例えば、高血圧症は不眠症患者では正常睡眠者の2倍以上も発症しますし、ほかにも、心筋梗塞、うつ病、認知症などのリスク要因とされていることはご存じのとおりです。


睡眠の質をよくするための生活習慣
 できれば薬に頼らないでグッスリ眠りたいと考えるのが人情。そこで本稿では、まずは薬に頼らずグッスリ眠るための方策を考えましょう。

1 覚醒と睡眠のリズムを利用する
 ヒトは夜行性動物ではないので、夜になったら眠りにつき、朝になると目が覚めるというリズムがあります。
 これを概日リズムといい、このリズムを作り出しているのは、脳の松果体というところから分泌されるメラトニンというホルモンで、光を感知すると分泌が抑制され、夜に分泌が亢進します。夜間ぐっすり眠るためには、このリズムを上手に利用して、日中は明るいところに身を置き、夜は厚手のカーテンを閉めて暗い環境にすることです。

2 深部体温と睡眠との関係を利用する
 腋の下で測る体温は、体の表面温度です。体温調節のコントロールセンターは脳幹にあり、脳の深部温度と睡眠との関係を調べると、深部温度が高めだと眠りにくくなり、低いと眠気を生じます。
 このことを眠りに応用すると、就寝の直前に熱いお風呂に入ると、深部体温が高めになり、眠気は生じませんが、就寝の2~3時間前に温めのお風呂にゆっくり入って、深部体温を少し上げておくと、寝る時間頃になると深部体温が下がるのでグッスリ眠れるといわれています。

3 不眠への不安感が不眠を呼んでしまわないように
 眠れないときに時計を見ると「ああ、もう3時だ。これでは明日の仕事に差し支えるのではないかと心配。早く寝なきゃあ」と焦れば焦るほど眠れなくなり、悪循環が生じます。
 そこで「眠くなければ眠くならないでも大丈夫」との考えに立ち至ることができれば、いつしか眠りにつくことができるでしょう。寝つけないまま布団の中にいれば、眠れないことへの心配がますます高まるばかりですから、いったんは寝床から出て、テレビで山の景色を見たり、静かな音楽を聴いたりしてください。

4 神経を高ぶらせてしまう物質や行動を避ける
 これは既にご存じで実行している方も多いでしょう。
 アルコールの脳の神経細胞に対する生理学的作用は興奮させてしまうことです。睡眠のためには鎮静効果を期待したいのですから、寝酒はマイナスです。
 コーヒーや緑茶に含まれるカフェインに覚醒作用があることは常識ですし、降圧薬やコレステロールを下げる薬や心臓の薬に中にも、眠りを妨げる方向に作用するものもありますから、内服薬を常用している場合は主治医にご自分が服用している薬にそのような作用がないことを確かめましょう。
 就寝前にテレビゲームに熱中すると、脳を覚醒させてしまい、安らかな睡眠にとって逆効果であることは、多くの人がご経験済みです。

薬の助けを借りるとすれば
 とはいえ、生活習慣だけではイマイチとなれば、やはり薬の助けも借りましょう。
 これまで、不眠症治療薬といえば「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」というグループに分類される薬が多用されてきました。この種の薬は、短期間使用するにはよい薬なのですが、長期間用いると、依存性を生じたり、認知機能が悪化したり、記憶が障害されたり、翌日まで眠気を持ち越したり、転倒・骨折が増えたりするなどの有害な副作用が生じることがわかってきました。
 そこで現在では、「メラトニン受容体作動薬」(市販名ロゼレムなど)や、オレキシンという脳幹の覚醒システムを抑えることで睡眠を引き起こす「オレキシン受容体拮抗薬」(市販名ベルソムラ、デエビゴなど)が、「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」に代わって用いられるようになりました。入眠困難の場合は、メラトニン受容体作動薬が勧められますし、入眠から睡眠維持効果を期待するにはオレキシン受容体拮抗薬が有効です。この種の薬は、今後もどんどん新しい薬が開発されつつあります。

共栄火災 代理店ニュースより抜粋
聖マリアンナ医科大学名誉教授齋藤宣彦

2025年12月25日